漢方で体のめぐりをよくしましょう
ストレスは妊娠の大敵!
血のめぐりが悪くなり卵の成長にも悪影響に
東京・銀座にあるむつみ薬局が専門とする「日本漢方」は、江戸時代から続く歴史ある漢方の流派の一つ。その流れを汲んだむつみ薬局は不妊相談に特化し、日本はもちろん、海外在住の日本人のオンライン漢方相談も行っています。
「働きながら妊活する女性がふえていますが、通院が大変だったり、職場の理解が少なく、休みを取りにくいなど、ストレスを抱えているかたも多いと思います。しかし、そのストレスは妊娠の大敵なんです」と、薬剤師の鈴木寛彦さんは話します。「妊娠に対するストレスの影響を西洋医学的にみると、まずストレスを受けると脳から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(別名ストレスホルモン)が分泌されます。卵巣の中にある卵は、脳からの分泌されたFSHやLHというホルモンによって発育・成熟していきますが、ストレスホルモンは、FSHやLHを放出するホルモンを抑制してしまいます。一方、漢方的にみると、ストレスを受けると体は緊張し、筋肉が無意識のうちに収縮します。子宮も筋肉でできていますから、緊張すると子宮や卵巣への血のめぐりが悪くなり、結果として卵の成長や、子宮内膜の厚みなどにも影響がでてくるのです。
漢方ではこのようなストレスを受けた状態を「気逆」、子宮や卵巣に血がめぐらない状態を「お血」といい、不妊の原因と考えます」
「気」をめぐらせれば「血」も「水」をめぐる。「気逆」の改善が重要です「漢方では「気・血・水」が過不足なく全身をめぐっていることが重要だと考えます。気=生命活動のエネルギー源
血=一般的な血液、水=リンパ液など血以外の正常な体液です。妊娠という場面では、「気」は卵が成長・分裂する力、「血」は卵に栄養を送るためのもの、「水」は卵を潤すためのものと
とらえることができます。この3つの要素のなかで、「血」や「水」は液体として存在するためイメージできますが、「気」は見えないものですから、理解しにくいかもしれません。しかし「気・
血・水」のなかで、一番大切なのは「気」。トロッコが「気」で、そこに「血・水」を載せて走っているとイメージすると分かりやすいですね。トロッコがないと荷物は運べません。つまり、「気」がめぐらなければ、「血」も「水」もめぐらないのです。したがって、ストレスを受けた状態である「気逆」の状態を改善すること=ストレス対策をすることは、妊活において大変重要だといえるのです」
体の毒を出すのが漢方の働き
漢方薬は体にどのような働きがあるのでしょうか?
「質問が多いのですが、漢方はサプリメントではありません。漢方薬は栄養素を摂る目的で使うわけではないのです。漢方の働きはその逆で、栄養過多をとり除くこと、体の毒を出すことです。
たとえば、卵がしっかりと成長するためには栄養素をたっぷりと取る必要があるといわれることがありますが、私はその逆だと考えています。現代人は栄養が足りすぎて体の中がドロドロし、気も血も水もめぐっていないために、卵がうまく成長できないのです。ここでいう毒とは、「血」の毒はお血、「水」の毒はむくみ、そして「気」の毒がストレスです。漢方によって体のめぐりを改善し、毒を排出することで健康にし、妊娠しやすい体になっていきます。漢方を飲むと湿疹がでるかたがいますが、しばらくすると消えて、その後妊娠したという例がよくあります。これは体内にたまっていた毒素が、湿疹という形で外に出て、体の中がきれいになり、妊娠しやすい環境ができたのでしょう」では妊娠力を高めるために、どんなことに気を付ければいいでしょうか。
「相談に来られたかたに私がお伝えしているのは、
まず1つめは
なわとびを1日5000回、約1時間程度すること。なわとびは血流がよくなりますし、下半身鍛
えられます。2つめは肩の力を抜いて「気」をやわらげること。3つめは、呼吸。鼻から吸って、1分間かけて鼻から吐く呼吸法を、電車の中や料理中など、気づいたらやってみてください。深い呼吸をすることで、子宮や卵巣に酸素をたっぷりと含んだ血が流れます。それらを続けるために必要なのは「やる気」。やる気は心の安定から生まれます。家庭と職場以外の第三の場所を持つことが必要だと考えており、むつみ薬局がそんな場所になればいいなと思います。仕事と治療の両立は、大変だと思いますが、常にお客様に寄り添い応援させて頂きます」他にも日常生活では、早寝早起き、日光にあたること、夜間のスマホをやめることなども気をつけてほしいと鈴木さん。
「現代人は、目を使いすぎていると思います。スマホやパソコンなど毎日、目を酷使していませんか。私は目だけでなく、鼻や耳の感覚をもっと使うべきだと考えています。風や雨など自然の音を感じたり、漢方薬のにおいを感じたり、大きな声を出すのもいいですね。そうやっていろいろな感覚をきたえて五感を感じれば、本能が働き、人間としての本能である子孫を残す力、もついてくると思っています」
無農薬栽培で作られた漢方薬にこだわる理由
むつみ薬局では、冷えやホルモンの改善によく用いられる当帰と芍薬は、自社で無農薬・有機肥料栽培を行っています。「無農薬のほうが安心安全なのはもちろんですが、農薬を使わずに育った植物は、外敵から身を守るために、活性化物質サポニンがふえます。そういう生薬の方が、毒を排出する力が増すんです。妊活は、赤ちゃんができることが目的ではなく、出産が目的。しっかりと体を整えて、元気な赤ちゃんを産んでいただきたいです」(鈴木さん)
主婦の友「赤ちゃんが欲しい・取材記事より」2020年冬号